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2006年11月14日 (火)

ウルトラマンレオ(マグマ星人)

《サーベル暴君マグマ星人》『ウルトラマンレオ』第1話、第2話登場

悪には悪の世界がある!
野性味あふれる最大級の宿敵宇宙人、ここに登場!

■「宿敵」という言葉が似合う悪役

 『ウルトラマンレオ』は放映時、『仮面ライダー』系の等身大変身ヒーローと『マジンガーZ』系の巨大ロボットアニメに負けかけていた。オイル・ショックの影響で、製作状況にも陰りがあった。だが、それにも負けず『レオ』の第1話、2話は立派な出来で、新ヒーロー・レオの登場を飾った。
 双子怪獣ブラックギラス・レッドギラスによる「東京沈没」(時流に乗った『日本沈没』ネタ)は、今ではもう見られないほど水をふんだんに使った大規模な特撮が展開。加えてウルトラセブンが復活して、いきなり戦っているという久々のイベント性に興奮したものだった。双子怪獣は正統派のウルトラ怪獣らしい造形。なぜか耳のなくなったセブンをタッグで苦しめる。そこに登場したのが黒幕、マグマ星人だ。
 雷光ともに、マグマ星人は黒い雲海の中からぐんぐん迫ってくるように飛来する。登場シーンからして、えらくカッコ良く、思わずしびれてしまう。彼はニヤリと不適に笑うと、片腕をマグマ・サーベルに変形させて、2体1でただでさえ不利なセブンに斬りかかるのだ。怪獣だけにやらせておくにとどまない。なんとも好戦的で卑怯さのただよった、イイ感じの登場シーンではないか。
 マグマ星人が他のウルトラ宇宙人と違うのは、徹底した「悪役(ヒール)」として描かれていることだ。マグマ星人の造形は、バルタン星人やガッツ星人といった宇宙人とは完全にコンセプトが異なっている。顔がまず違う。狂気を秘めた仮面然とした顔が実に魅惑的なのだ。うっすらと開いた凶暴な目つき……その目も口も、スーツアクターの「人間の口」がそのまま露出している。だから、表情が豊かだ。憎々しげに視線を送ったり、口元を歪めて嗤(わら)ったりできるのだ。この人間くささが「異形の生物」とはまた違った魅力をもたらした。

■「宿敵」の資格とは

 レオの地球での姿、おおとりゲンはマグマ星人の凶悪さを回想する。マグマ星人こそは、ゲンの故郷L77星を滅亡させてしまった張本人だった。宿敵と言って良い。そして、今またゲンが第二の故郷と決めた地球を滅亡させに来たのだ。
 マグマ星人は、なぜ滅亡をもたらそうとをするのか……『ウルトラマンレオ』では、地球に来る宇宙人の大半は明白な動機を持たない。まるで通り魔のように地球に来訪し、地球の滅亡を促進させようとする。
 マグマ星人はその中でも特別な存在だ。宇宙の帝王になろうとしているのか、あるいは他の生物を滅亡させるのが彼の宿命なのか。そう思ってみると、マグマ星人がさらに他の宇宙人と違う特徴が見えてくる。彼の身体、ウェットスーツを使ったボディと銀のブーツや手袋を着用した姿は、レオに実によく似ているのだ。レオは胸にエンブレムをつけている。マグマ星人にエンブレムがあるのだ。
 ひょっとしてレオの世界でマグマ星人は「悪のウルトラマン」的存在ではないか。そう思うと、マグマ星人のキャラクターがなぜ魅力的かわかってくる。
 表情が豊かで自分に気に入らない星を自己の意志で滅ぼしていくマグマ星人の方が、滅亡させられ防戦一方、ある意味で受け身になっているレオたちより、引き立つキャラクター性を持っているからだ。
 この意味でも、マグマ星人は「宿敵」と呼ばれるにふさわしい宇宙人なのである。

■マグマ星人再登場! だけど…

 このように魅惑的なマグマ星人は、実はもう一度だけ登場している。
 レオが放映中の74年、夏休みのある日曜に円谷プロに怪獣同人誌PUFF会員を中心とする高校生・大学生のファンが集まった。円谷プロの熊谷健プロデューサー(当時)が同席し、意見を聞いた。結果として番組に反映されたことが二点。ひとつはカプセル怪獣の再登場(ボールセブンガー)で、もうひとつはマグマ星人の再登場だった。
 マグマ星人については、ここで述べたようなことが「久々の名キャラ」という評価になっていた。ぜひ、もう一度あの不適な姿を、という意見であった。私も大賛成だった。
 小学館の学年誌での設定では、L77星が滅亡時にレオと双子の兄弟アストラが生き別れとなり、マグマ星人に捕らえられたとされている。アストラが足に鎖を付けている理由はそれだ。だが肝心のテレビ放映では、なぜかアストラの苦闘の日々はまったく描かれなかった。ぜひ、この「レオ・サーガ」をもう一度テレビで描いて、レオの中に描かれるべき宿敵マグマ星人像を完成させ、シリーズとしての芯を通して欲しい、というファンとしてごくごく自然な願いであった。
 確かにマグマ星人は願いに応えて再登場した。だが、それは「怪獣ローランをお嫁さんにしたいマグマ星人」という、とんでもないものだった。しかも、あの魅惑的な人肌の露出した口もとは、スーツアクターのメイクが大変だったのか、FRPの面に置き換えられ、まったくの無表情になっていた。
 これは違う! とさすがに画面に向かって叫んだ。ゲストに桜井浩子と黒部進の初代ウルトラマン・コンビが出ていようと、そんなことは関係ない。マグマ星人は、ローランをお嫁さんにできるはずもなく、レオに懲らしめられて消えてしまった。あれはニセモノだったとでも思いたい気分だ。
 宿敵のカッコ良さ。それを醸し出すのは、非常に大変なことだ。マグマ星人は、レオの1、2話の時点では宿敵の表現に見事に成功していた。学習雑誌の展開も、それをうまくサポートしていた。だが、肝心のフィルムでの再登場で大きくミソをつけてしまったのだ。その上、マグマ星人の着ぐるみはすぐにババルウ星人に改造されてしまい、「レオ・サーガ」に決着をつける気はないということが判って二度も三度もガッカリした。
 私の心の中では、マグマ星人はいまも不適に嗤って宇宙の星々を怪獣を操っては破壊している。きっと、それでいいのだろう。
【初出:「ザ・怪獣魂2」(双葉社) 脱稿1999.12.10】

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