« 劇場版『∀ガンダム』 | トップページ | 「20年目のザンボット3」単行本企画書 »

2006年11月 9日 (木)

日本沈没(TVシリーズ)

寄稿題名:必見!特撮抽出機能

 本作は1970年代に起きた終末ブームの産物である。同じ終末色の『宇宙戦艦ヤマト』の本放送に続いて夜8時から放映されていたのが思い出される。
 映画版『日本沈没』は全編鉛のような色彩に満ちた災害描写の特撮が非常に印象的な作品で、当時の中高校生へのインパクトは『ヤマト』と同じくらい大きいものがあった。その中で始まったTV版は……うーん、正直言って当時は怒ってたのを思い出した。
 原作と映画は「日本列島が海に没する」という大ウソを真摯に描いていた点がSFらしくて良かった。それに比べ、TV版はレッツビギン村野武範とヒロイン由美かおるという配役からしてどうも通俗的なところが気になって仕方がなかった。そして日本全国名所旧跡観光地ランドマークが毎週毎週沈む! という展開もガクッと来た。マントル対流はどうなったんだと(笑)。
 でも、改めて観るとこれで良かったと思う。日本人として刷り込まれている風景を週替わりで精緻なミニチュア化して破壊する映像は、今だからこそそれだけで価値が高い。なんてことも、DVD時代になってから言えること。このDVDソフトはプログラム機能が極めて優れているのである。メニューから「災害マップ」を選ぶと、日本列島の図にその巻ではどこで何が破壊されるかが整理されて出てくる。さらに「連続視聴」を選ぶと、特撮シーンだけを抜いてつないで全部観ることができるのだ! これではまるで『沈没ファイト』ではないか(笑)。邪道という意見もあるだろうが、そこだけを楽しみに1時間のドラマを観ていた身にとっては待望の機能である。嫌なら使わなければいいだけだし。
 というわけで、この「特撮抽出機能」があるがゆえに本DVDを強く推薦した次第である。

<CAP>
●清水の舞台は身をよじって倒壊し、金閣寺は静かに水流に没する。どこがどう破壊されるか特撮パワーが駆使される!

●異変をキャッチした深海潜水艇わだつみ。本作を代表するメカだ。

<コラム>
 東宝の製作だけあって本作の出演陣はなかなか濃い。主題歌の五木ひろしや鳳啓助+京唄子の他、仲谷昇、田中邦衛、根上淳、佐原健二、黒沢年男ら有名の俳優が目白押し。かつて同時間枠青春ドラマの教頭先生でおなじみ穂積隆信と柳生博がコンビで登場する回(第14話)もあって微笑ましい。

【初出:『アニメージュ魂』(徳間書店) 脱稿:2002.04.12】

<別バージョン>
※この原稿は珍しく長く書いたバージョンも保存してあった。こうやって長めに書いて縮めていくのがいつもの書き方なのだが、それにしてもこれは長い。途中で文字数変わったのかな? 内容ダブリ、未完はご容赦を。

 『宇宙戦艦ヤマト』の本放送に続いて同じチャンネル(関東では日本テレビ)、夜8時から放映されていたのが、このTV版『日本沈没』である。今でもこの2つの番組の間にあった頭痛薬のノーシンのCMをよく覚えている。映画版で丹波哲朗演じる首相が「ただちに門を開けて宮城内に避難民を入れてください!」って言うの。あ、知りませんか……。
 映画版『日本沈没』は全編鉛のような色彩に満ちた中でフラッシュが明滅する災害描写が非常に印象的な作品で、当時高校生の自分へのインパクトは『ヤマト』と同じくらい大きかった。そういう中で始まったTV版は……うーん、正直言って当時は怒ってたんだ。この年頃はマジメ過ぎたからなあ。
 原作と映画は「日本列島が海に没する」という大笑いされそうなウソを非常に真摯に描いていた。それに比べると、どうにも通俗的なところが気になって仕方がなかった。主人公の小野寺は同じ時間枠、かつてのレッツビギンだった村野武範、ヒロインの阿部玲子は由美かおるでこれが富豪の令嬢で最初は対立しているが……という臭いドラマを作ろうとする見え見えの設定からして何だかなあと。映画版と同じ田所博士の小林桂樹だけが頼みの綱と思ったら、いきなり地面に耳を当てて「来る!」と地震を予知するトンデモ博士になっているし。
 そして日本全国名所旧跡観光地おいでませのランドマークが毎週毎週スポットで沈む! という発想にもガクッと来た。山中盆地の京都にある建物が一点だけ海没(?)するわけないじゃんと。マントル対流はどうなったんだ(笑)。
 でも、改めて今観るとこれで良かったんだと思う。特に最終回や総集編で流れる、富士山やねぶた祭りや田園風景がフラッシュバックする、いかにもの「日本の風景百選」みたいな実景を観ると泣けちゃうもんね。なんか、今さらながらに日本人としてのDNAに刷り込まれているものがあるよね。それを週替わりで精緻なミニチュアを作って破壊することで、逆説的にその大事さを訴えようというのは、姿勢として正しい。
 なんてことも、DVD時代になっての機能がついたから言えることかも。このソフトはDVDとしてのプログラム機能が極めて優れている。メニューから「災害マップ」というところを選ぶと、日本列島の引き出し図解になる。そこに、その巻ではどこで何が破壊され、沈むかが整理されていて、セレクトすると本編のその特撮シーンに一気に飛べるのである。さらに優れているのは「連続視聴」を選ぶと、その巻の特撮だけを抜いてつないで全部観ることができる!
 これではまるで『沈没ファイト』ではないか(笑)。邪道だという意見もあるだろうが、まあしかし、そこだけを楽しみにドラマ(1時間番組なので非常に長い)を観ていた身にとっては嬉しい機能である。嫌なら使わなければいいわけだし、選択が増えるのは取りあえず良いことだと思うのだよ。
 というわけで、この機能があるがゆえに本ソフトを推薦した次第である。
 ちなみに、1巻には「庵野秀明と樋口真嗣が福田純監督と対談するコメンタリー」がついていて、ジャケットデザインも例の極太明朝が直角に曲がりまくっているし、復刻版のプラモデルがオマケについていたのも、今ならではの特典に力を入れている証拠ということか。

※なお、本ソフトは2006年の再映画化合わせでバラの再発売の他にBOXも発売された。

|

« 劇場版『∀ガンダム』 | トップページ | 「20年目のザンボット3」単行本企画書 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本沈没(TVシリーズ):

« 劇場版『∀ガンダム』 | トップページ | 「20年目のザンボット3」単行本企画書 »