勇者ライディーン
寄稿題名:神秘のパワーで元気充満!
『勇者ライディーン』DVD最大の見どころは、第7巻に収録された「富野由悠季インタビュー」の映像である。富野総監督の映像自体は珍しくないが、インタビュアーにこそご注目。それは、現在『ラーゼフォン』で初監督に就任し、やはり「美と神秘のロボットアニメ」でライディーンの血脈をいくばくか受け継いだ作品づくりに挑戦中の出渕裕なのである。収録は2000年の11月。今にして思うとよくできた伏線だなあ……。
──と他人事みたいに書いているが、「それはブッちゃんがいいよ」と振ったのは筆者なのであった。そういうものである。
この作品を再見すると、さすがに古さは禁じ得ないものの、やはり熱気に充ちていて画面から何かが飛んでくるものがある。作品の感動とは、理屈と説明の積み重ねではないのだなあ、と思う部分が多々ある。
たとえば前半の富野監督編は、打倒マジンガーへの挑戦意欲の高さと、つむぎ出した神秘のイマジネーションの大きさが良い。第1話を観ると、悪魔の時代が本当に来そうな予兆の風景、ライディーンの示す神々しさ、そして船や人体までもが石と化してしまうまがまがしき黒い光など、明らかにこの作品にしかないものが多く息づいていて、それだけで心臓がドキドキする。
後半の長浜監督編も、バトルにバトル、さらにバトルを積み重ねて数ラウンドを必ず消化するライディーンの戦いのこってり感がたまらない。特に40話台の盛り上がりは最高である。敵が合体獣を繰り出して来たことで、対抗として自分の身体をも傷つける必殺技ゴッド・ボイスの封印を解くライディーン。母への思いとクライマックスが交錯するドラマ展開が見事だ。
画は未熟でもついつい画面の中に引き込まれるものを感じてしまう。最近インターネットの掲示板でアニメの感想を見ていると、美しい絵を遠くの方から眺めるように価値を見いだしているのと好対照である。
別に昔の方が良いとか昔に戻りたいなどとはまったく思わないが、この差は何なのだろうかと考えつつ楽しむにはちょうど良いDVDソフトではないだろうか。
<キャプション>
●巨大な岩の手の形をした移動要塞ガンテ。悪魔世紀の始まりを象徴するビジュアルを体現した存在だ。
●第1話の安彦良和によるライディーンの顔の作画は、まさに神がかった美しさを表現しきっている。
<コラム>
本作の主人公ひびき洸は、ライディーンに乗らないときは高校生活を送っているので、ドラマも学園ものと密接にからみついているものが多い。なので敵のライバル、プリンス・シャーキンが突然に転校生・砂場金吾として現れるというスゴイ展開もあったりするのである。やはり学園に転校生は美味しいネタなのである。
【初出:『アニメージュ魂』(徳間書店) 脱稿:2002.04.12】
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