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2010年6月

2010年6月30日 (水)

片渕須直監督「BLACK LAGOON」も破格の廉価版に!

同じジェネオン・ユニバーサルの廉価版シリーズですが、こちらも『マイマイ新子と千年の魔法』、奇跡のロングランの記憶も新しい片渕須直監督の代表作が、ありえないお得なお値段でリリースです。
これは日本の商社マンがあるきっかけでタイで海賊もする運び屋の一員になってしまうという、広江礼威原作のブラックユーモアと銃弾と鮮血に充ちたアクションもの。設定やビジュアルなどを見ると「マイマイ新子」と対局にあるようにも見えるんですが、実はやはり同じクリエイターの作品なんだなと、しみじみ分かる部分が多く。
よく笑いをとるために、「都会ぐらしのひよわなキャラが、突然、自然に満ちあふれた野性味あふれるところに来て、初めて目にするような、荒っぽい事件に触れていくうちに、いつしかなじんでいって、あいつもやるねと一目おかれる話」というとこは、マイマイ新子もブララグも同じ、なんて言ってるわけですが。それだけではないんですよね。
初期にあるUボートの話など、50年以上も前、たしかにそこにあった惨劇と人間性と、いま起きていることが交錯していく感じ。あるいは有名な双子編で描かれている、彼らのルールと我らのルールのせめぎ合い。最終的に、我らのルールが彼らの生存を否定してしまうわけですが、こちらが正しいというわけではないという視座がきちんと、苦み混じりでおかれている。
もちろん両作品とも原作ものなので、すべてが片渕監督のものというわけではないですが、それにしてもアニメのような色味からしてパキッと割らないと伝わりにくい媒体で、こうした慎重な手業で、複数の価値観を多層につんでいくということ、それを混乱させずに「あまねく」描くみたいな、そうしたアプローチにはしびれるばかりです。
あと片渕監督はミリタリー系にもすばらしく造詣が深いのですが、そっち方面のアプローチや、ベトナムなどの海外ロケの「マイマイ新子」と同等のアプローチも存分に活かされ、すごみを獲得してます。でも、けっこう笑えるエピソードが多くて、それもいいんですよね。

ということで、これまたBlu-rayで買い直したばかりなので、Blu-ray1枚3話(巻によっては2話)分のお値段に千円札つけると12話分買えるという値づけには正直、涙目ですが(苦笑)、いえ、後悔してませんよ。Blu-rayはBlu-rayで、あの素晴らしい南の海の色味や、高温多湿の空気感がくっくき出て、楽しめましたから。
ともかく、「話は聞いたことがあるけど、そんなにすごいの?」的に思ってる方には、絶対にオススメです。
あちこちで引き合いに出してたので、「興味を覚えたけど、買うのはちょっと」と思ってる方に推薦できる商品ができて嬉しいです。
あ、ただし、小さいお子さんには絶対にオススメできません(笑)。オトナ向けです。


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神山健治監督「精霊の守り人」が廉価版に!

初のオリジナル作品にして劇場映画の『東のエデン』をヒットさせた神山健治監督。その代表作である「精霊の守り人」が、アマゾンならなんと1クールで3500円を切るという、最初は目を疑ったような破格の価格でDVD-BOXリリースです!
初リリース時にバラで集めた身としては10分の1ちかい値付けに、正直涙目になる一方で、この際、一人でも多くの方にこの傑作を鑑賞していただけるなら、絶対にいい! ということで。
この2010年の世の中で、考えられる限り最高のコストパフォーマンスのお買い物だと確信しています。
本放送時にも応援であちこち語ってきたことですが、とにかくこのアニメのお話づくりは異常としか言えないことばかりです。通常の物語は、どうしてもバカだったり未熟だったり無知だったりすることで、葛藤が生じたり、お話が転がったりするわけで、それはなんら否定されることではないのですが。そういうのが皆無に近い。それぞれに懸命に生きて、考えている人間たちが出逢うことで、何か重大な化学変化が起きる。
そういう回が1本、2本あるならまだ分かるんですが、特に中盤近くまではほとんど圧巻のドラマばかりで、見終えた後に呆然としたことが何度あったか覚えてないくらいです。

Blu-rayが先に出るのではと思ってましたが、いやまず広く普及して再評価されてからだ、というんで全力で応援しています。
繰りかえします。こんなにお買い得なパッケージ、他にないですよ。絶対にオススメです。

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2010年6月26日 (土)

『宇宙ショーへようこそ!』初日です

舛成孝二(ますなりこうじ)監督、初のオリジナル劇場映画『宇宙ショーへようこそ』が本日6/26公開です。
氷川はマスコミ向けプレスシート寄稿に続き、パンフレットの一部記事をお手伝いさせていただきました。
また、以下のコラムも書いてます(予告編も埋め込みです)。

氷川竜介のチャンネル探訪

冒頭22分はネットで公開中。また、東京MXの特番の再放送などもあるようです。詳しくは公式へ。

公式サイト

個人的には敬愛する池 頼広さんのサントラ(2枚組)発売が嬉しかったです。130分の映画中、90分ぐらいは音楽が流れているそうで。スコアリングの妙が楽しめるとのこと。私が拝見したバージョンから音響をやり直しているそうなので、私も劇場に行ってみようと思っています。サントラにはスーザン・ボイルの主題歌も収録されています。

観客動員は初日、2日目が勝負なので、見ようと思われている方はぜひこの土日でお願いします。

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2010年6月25日 (金)

文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門審査員を担当します

7月15日から募集開始される「文化庁メディア芸術祭」のアニメーション部門審査員を、担当することになりました。
これは公募を前提に審査するもので、商業作品でも募集に参加したものでないと受賞されません。プロデューサーの方で「これぞ」と思う作品はすでに応募前提だとは思いますが、多数の応募を期待しています。
また、一般の短編作品についても同様ですので、力作をお待ちしております。

正直、大役に緊張していますが、新しい作品の息吹に触れることは刺激になるので、がんばりたいと思います。よろしくお願いします。

●文化庁の募集規定

●アニメ!アニメ!の報道

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2010年6月14日 (月)

「はやぶさ」大気圏突入

すばらしいプロジェクトでした。
幾多の困難を乗り越え、最後の最後まで「あきらめない」を貫いて、この奇跡の帰還をもたらしたJAXA関係者の尽力に敬服します。

映画『サマーウォーズ』のクライマックスに登場する「あらわし」のモデルが「はやぶさ」であることは有名ですが(一部の制作資料では「はやぶさ」になってます)、宇宙の迷子にならず、無事に大気圏突入できたことが、すばらしいです。
最後の燃え尽きる瞬間の映像は以下で見られます。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100614/t10015087141000.html

驚くべき美しさ。現実はやはりすごいです。この映像は人の記憶に刻みこまれて、また新しいロマンを生むに違いありません。

さて、「人工物や人間が大気圏突入に際して放つ光が、地球からは美しい流れ星に見える」というロマンは、ブラッドベリの「万華鏡」から「サイボーグ009」を経て、「大空魔竜ガイキング」のエンディングや「ふしぎの海のナディア」の最終回などなど、連綿と継承されている一大ロマンですが、JAXA関係者のツイッターに見逃せない発言があると教えていただきました。
http://twitter.com/Hayabusa_JAXA/status/16013506680

(引用開始)
Hayabusa_JAXA
はやぶさ帰還ブログ
2010.06.13 01:22
6/13午前1時。再突入まで残り22時間です。残り距離は約42万km。検索で有名な某先生も粋なことをしますね。再突入はまだ先です。皆さんも好きな音楽でも聴いてリラックスして休んでください。わたしも大好きな堀光一路さんの「宇宙の星よ永遠に」を聴きながら仮眠します。(IES兄)
(引用終了)

驚きました。
「宇宙の星よ永遠に」は『無敵超人ザンボット3』のエンディング。
最終回、ただひとり主人公が家族たちの犠牲のはてに死線を越え、大破したザンボエースで大気圏突入して地球へ帰還。そして……。という後の感動のシーンで、エンディングの2番が流れます。それはまさに「戦いを終えた宇宙の星」にふさわしい曲です。
CDをお持ちの方は、ぜひ2番の歌詞に注目して聴いてみてください。

こうして連綿と受け継がれていくロマンが、アニメというフィクションを越えて現実世界に「奇跡」をもたらしたこと。これは本当に「アニメを好きでい続けて、見続けていて、語り続けていて良かった」と思える瞬間でした。ありがとうございます。
この「はやぶさ」最後の美しい輝きに乗せられた人の「想い」は、必ずや受け継がれていき、また世の中を変えていくことになると想います。まさに感無量です。
もう一度、すべての「はやぶさ」関係者の方々に深い感謝をささげます。

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2010年6月10日 (木)

片渕須直監督のイベントに出ます & マイマイ新子情報

以下のイベントに出席させていただくことになりました。
監督のトークのお相手というかたちで、これまでの作品について進めていくことになると思います。
「マイマイ新子」だけでなく、OVA新シリーズの発売が近い『BLACK LAGOON』も大きな話題のひとつです。
お近くの方は、ぜひお願いします。

◆6月12日(土)
  トークイベント『Roots of Sunao Katabuchi』(於:阿佐ヶ谷ロフト)

・料金:前売¥2,000/当日¥2,500(共に飲食代別)
・出演者:片渕須直(『マイマイ新子と千年の魔法』『BLACK LAGOON』脚本・監督)
・ゲスト:Minako“mooki”Obata (『マイマイ新子と千年の魔法』音楽、『BLACK LAGOON』双子編エンディング)他

片渕須直が自らが、これまで語られなかった当時の舞台裏や制作秘話を紐解くトークショー。片渕作品における音楽の重要性にもスポットを当ててお届け。両作の秘蔵&新作映像公開!プレゼントコーナーもあります!

※ローソンチケットL:38095に加え、
 阿佐ヶ谷ロフトHPでも10枚限定発売中 http://bit.ly/bVZ0kX

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関連イベントとして、以下も予定されています(氷川出席はなし)。
会社辞めたばかりの氷川にも大きな勇気を与えてくれた「アリーテ姫」も上映されますので、ぜひ。
先日、見返したら「アリーテ姫」の中でも、もろに「千年の魔法」ということに言及されていたので、
ちょっと驚きました。その千年前ってのは、たぶん今から千年ぐらい先なのかなとか。
「マイマイ新子と千年の魔法」とあわせると、いろいろと妄想が拡がります。

◆6月19日(土)
  オールナイト上映イベント『大人が童心に帰る夜
 ~マイマイオールナイト~』(於:渋谷シアターTSUTAYA)

・上映作品:「マイマイ新子と千年の魔法」(2009)
     「アリーテ姫」(2000)、「ACE COMBAT 04 shatterd skies」(2001)他
・ステージイベント司会進行:吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)

片渕須直監督作品を中心とした“大人が童心に帰る”をテーマにした映画鑑賞会、
及び同作品をテーマとしたステージイベント。ファン有志による自主企画です。
片渕須直監督を囲むトークセッション。秘蔵映像や、制作秘話なども飛び出すかも?
※詳しくはイベント特設ホームページへ http://mmallnight.mu-sic.jp/

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さらに発売を控えたDVDについても情報が届きました。
第一報のその後、DVDもちょっとお手伝いをすることになり、作業は完しています。
amazonのジャケットも掲載されたようですね。
本作を千年後に伝えるために、ぜひよろしくお願いします。

●異例のロングラン上映中(7ヶ月目突入!)
“監督厳選”映画35mmカットフィルム5コマ×5種セット
DVD購入者から抽選でプレゼント決定!

昨年11月21日に全国公開し、異例となる7ヶ月目を迎えるロングラン上映で話題となっている劇場アニメーション映画「マイマイ新子と千年の魔法」。7月23日(金)発売となるDVD初回生産限定特典の『マイマイ映画35mmカットフィルム』に加え、抽選で10名の方にはさらに『“監督厳選”映画35mmカットフィルム5コマ×5種セット』をプレゼントする事が、6月5日(土)にラピュタ阿佐ヶ谷にて開催した満員の舞台挨拶にて片渕監督から発表されました。

片渕須直監督(6月5日ラピュタ阿佐ヶ谷舞台挨拶にて)
Maimai_filmcutset01_2

「確か今日で57回目の舞台挨拶になる。ラピュタ阿佐ヶ谷に帰ってくる事ができました。今日も座りきれないくらいのお客さんに来てもらえて感謝しています。ラピュタさは自分たちにとって得難い場所となりました

2006年12月から撮影を始めたメイキングは、40時間を超えます。DVDに特典収録しているものは、それを約40分に凝縮したものです。自分たちの制作の歴史が、作品という結晶になった軌跡です。

原画やフィルムなどは、どんな映画でも、上映が終わると処分されてしまいます。それが、(初回生産限定特典の)カットフィルムとして皆さんの手元に届き、このような形で生き残っていくのは幸せな事です。
そこで、せっかくなので、さらに私が厳選した35mmカットフィルム5コマ×5種セットを、10名の方限定ですがプレゼントしようという事になりましたたくさん仕事をしてきましたが、こんな素敵な体験は初めてです。
全ては観客の皆さんの“声”“口コミ”で広がった。感謝の気持ちでいっぱいです」



公式HP www.mai-mai.jp
公式Twitter @maimai_shinko

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2010年6月 4日 (金)

『宇宙ショー』本編冒頭の22分をノーカット地上波放送!

http://www.uchushow.net/news/index.html
ビッグニュースです。6月26日公開、舛成孝二監督の『宇宙ショーへようこそ』の本編が一部、先行してオンエアされます。

番組名:「宇宙ショーへようこそ」公開直前!冒頭ノーカット放映SP!

放送日:2010年6 月13 日(日)24:00~ <再放送>2010年 6 月16 日(水)24:00~
放送局:TOKYO MX

公開前としては史上最長となるそうです。22分はTVアニメの本編1話分なので、かなりたっぷりしてます。
初期ポスターに出ていた「田舎」のイメージを中心にしたブロックで、その密度たるや……おっと、後はオンエアでのお楽しみ。もちろん、この部分を観てしまっても興ざめにはならないでしょう。
むしろ劇場の大スクリーンで確かめたくなるんじゃないかなと。

オリジナル作品や漫画原作ではないアニメーション映画の魅力を伝えるのは、本当に難しいという実感があります。いっそ実物を見てもらった方が……と思うこともしばしばでしたので、新しい試みとしてどういう結果になるか、楽しみにしています。

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 全記録全集

amazonで予約が始まったようです。今回もインタビューでお手伝いしています。
「序」ではデジタルアニメ時代にどのように映像を再構築したかというテーマで、かなりの人数にお話をうかがいましたが、今回は人数絞った分、取材時間も長めにとり、たっぷりと聞いてます。特に「いかにして『破』になったか」という点については、浮き彫りにできたかと。
また、全体ではフィルムストーリーを分冊にするなど、かなりのボリュームアップになってるはずです。
詳しい内容などは公式HPご参照ください。

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