地球の静止する日(ブルーレイ)
SF映画の古典です。
個人的には、
「DVDで買った」→「観ないうちに廉価版が出た」→「リマスター版が出た」
というヒサンな目にあった(笑)上に、今回さらにリメイク版に合わせてのブルーレイ化。
まあ、持ってるのでスルーしようかと思ったんですが、特典に「謎めく音色テルミン」というのがあって、さらに巨匠バーナード・ハーマンのミュージックトラックつきと書いてある。うー、原音どおりのサントラ、聞いてみたいな。それとモノクロのブルーレイがどんな感じなのか知りたかったので入手してみました。
結果はなかなか良かった。ハリウッドはすごいなと思ったのは、それこそ半世紀前に演奏に使ったテルミンが現存してるんですよ。購入は1930年代初頭というから、すごすぎ。真空管をどうやってメンテしてるのか謎ですが、新規に音楽家がライブパフォーマンスする映像も収録されてるんで、現役なんですよ。
テルミンは、ありとあらゆる電子楽器の先祖でして、SFとも密接な関係のあるものです。この映画が発端になって、一時期は「SF映画と言えばテルミン」になったくらいにもの。なんでも開発されたときの初演、第一次世界大戦のころですが、「精霊の声」だと思われて民衆がパニックになったということですね。確かに一種の声楽っぽい音でもあるし、未知の音、恐怖の音にも聞こえるということで、「宇宙の音」と言えばテルミン、ということになったわけです。
人体のもつ静電容量とアンテナとの距離のゆらぎを音に変える……という説明で合ってるのかな。つまり手を話したり近づけたり、ふらふらとさせると、「うぃうぃうぃ~~」と音階も変わるという。他の伝統的な楽器というのは、まず人体と楽器に物理的な接触があり、しかも楽器の方に機械、メカニズムがあるわけです。なので生理を音階に変えるというところに、なんてのか、ある種の限界があるというか、8音階に絞りこむコントロールみたいなものがある。そこで人工的になってしまう。
しかし、テルミンは身体の動きやらポーズやら、ある種の舞踏感覚みたいなものが、直接音になるというんで、非常に「ナマ」な感じ。演奏も全部スラーがついたかたちになるので、知ってる曲でも不思議な感じに聞こえるわけです。
というんで、奥の深い楽器としてSF大会でもよく演奏会をやってるし、開発の経緯とテルミンという人についても映画にもなってる。仕事仲間の腹巻猫さん(劇伴倶楽部)などは購入したくらいで、自分もちょっと興味津々でしたが、1年ぐらい前かな、「大人の科学」で付録にテルミンが!という話題が仲間うちであがったら、売り切れになってしばらく買えなかったですよ(笑)。まあ、入手後、忙しくて作ってませんが。と、amazon見たら製品版も売ってますね。うー、最初からこっちにすりゃ良かったのかな。
私もそう言えば、電話機のハードを設計してたとき、似たような現象に遭遇しましたね。ちょっとシールドが悪かったか何かで、人間の身体の何かを音として拾っちゃうんですよ。まあそれはエラーなんだけど、完全にコントロールされていない、「身体性のある音」というのは、ともかく印象深いです。それとSFを強く結びつけた1作ということで。キアヌ・リーブスのリメイク版でもテルミン使ってるのかなあ。
あと「白黒のブルーレイを確かめたい」と言った理由ですね。
かつてDVDの評価でですね、初期には「LDと比べて暗い方がよく見えない」というのがありました。特にホラー映画、怪獣映画もかな。再生ツールの問題もあり、最近のPC再生ソフトだとガンマ値までいじれるので、そんなにヒドイことにはならなくなってますが。
実を言うと、おそらくこれは白黒映画の方が厳しいと思うんです。というのは、RGBの24ビットデータというのは、16777216色(1千6百万色)なので非常に色数が多く表現力が豊かとされてます。だけどこれはRGBそれぞれを8ビットに割り当てたので、256×256×256という意味なんですよね。つまりアカからアカだけをとれば、階調はたった256しかない。
で、要するに白黒映画だと(0.0.0)(1.1.1)みたいなデータしかないので、暗いところから明るいところまで256階調しかないんですよ。で、カラー作品であれば足りない階調を色表現でなんとなく補完しちゃうんですが、白黒映画は本当に階調しかないんで、明暗だけが手がかりなんですよね。
ということで、ブルーレイは前から「解像度もだけど、真価を発揮するのは色数と階調、それに音」と言ってる流れ上、気になったということでした。結果はかなり満足。すごい質感が分かるというのは、階調表現が増したということでしょう。ただ暗部というかナイトシーンはもともとなのか、思ってたよりは黒っぽかったですね。全編通して観るのが楽しみです。
そういや原作小説も買って、どこかに置いたままだしなあ……。
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