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2008年11月

2008年11月30日 (日)

ジャイアント ロボ THE ANIMATION 地球が静止する日 DVD-BOX

ケレン味のある演出ではおなじみ今川泰宏の代表作。DVD-BOX(廉価版)の発売が決定しました。バラ売りのときに解説書はつかず、メニュー画面に情報を入れることになって、その文章作成をお手伝いしています(キャストに関しては、ライターの松野本和弘さんと共同作業)。たぶん、同じ内容ではないかと思います。ちなみに映像は旧DVD-BOXからさらに手を入れてあります。
残念ながらBlu-rayではありませんが、完結までに7年を要した超大作、その前のDVD用に一気見したらけっこう気持ち良かったです。6巻と7巻の間が特にものすごく空いてしまって、レンタルビデオ店で「全6巻」とか堂々と書いてあるところも少なくないと聞きます。万が一、最終巻をご覧になってなければ、この機会にぜひ。

外伝の「銀鈴GinRei」シリーズは含まれないようですが、そっちのメニュー解説もなんか妙に凝った記憶があります(笑)。いや、あの居酒屋の脱力ネタとか、意地の悪いオチとかけっこう好きなんだけど。ということで、こっちは旧作バラですが。

<補足1>

 去年いきなり一迅社さんから設定資料集が出ました。なかなか充実の内容で、初収録も多数です。本作でキャラデザと作画監督を担当された山下明彦さん(近作は『ゲド戦記』『崖の上のポニョ』の作画演出)のインタビューも掲載され、貴重な一冊です。

<補足2>

そういやサブタイトル「地球が静止する日」の元ネタ映画のリメイクもそろそろ公開ですね。とか言ってたら、Blu-rayで出るんですね。リマスターのDVDをダブリで買わなくて良かった。SF映画の古典にして、ロボット“ゴート”のイメージはいろんなところに影響与えてます。こないだナニゲに見た『バビル2世』(最初のアニメ化)の荒木伸吾作画監督回にもそんなシーンがありました。しかし、オリジナル映画は「地球の~」だったのに、リメイクは「地球が~」になってしまい、Gロボとまったく同じになってしまいました(笑)。

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2008年11月21日 (金)

トップをねらえ! Blu-ray Disc BOXは画質見本市

●トップをねらえ! & トップをねらえ2!合体劇場版!! Blu-ray Disc BOX

発売となりました。これは前に出たDVD-BOXと基本的に同じ内容です(フィギュアはつかない)。ブックレット等はタルカスさんの担当で、氷川は田中公平先生のインタビューアだけというピンスポットのお手伝いです。なお、2006年秋公開の劇場販売のパンフレットは氷川が執筆を担当しました。なかなか熱い1冊でした。

映画の内容は、パート1はよく知られている全6話をまとめたもの。音声は5.1ch化されていて、アフレコも全部やり直してます。ノリコとお姉さまの声のハリもなかなか。あと、若本紀夫さんのコーチの演技が前は「タカヤ!」だったのが劇場版では「たぁあ~~かぁやあ~」になってるのも隠れた聞きどころ(笑)。
パート2は新作が多く入っているのはもちろんなんですが、個人的にはけっこう印象が違って驚いたものです。その辺は当時の日記に書いたので、評論集の方のブログに再録しました。

遅効性の毒(劇場版トップをねらえ2!)

2の発売当時、たしか2~4巻ぐらいの部分は月刊ニュータイプ誌で記事や鶴巻監督取材、設定資料集のネーム書きなども担当しました。ということで、そこそこ中身は知ってるつもりだったんですが、世の中、意外なことがあるものです。その意外性が良かった。この再録した日記の話も、別に他人と完全に共有されなくっていいんです。実際、「よく分からなかった」とも言われました。でも、「そういうことがある」ということが知れるだけで充分なことがあるわけです。そこも含めて「あなたの人生の物語」なんでしょうね。

で、それはそれとして。いただいたサンプルを拝見したら、意外な発見がありました。
それは、画質がどんどん変わっていくことなんですね(笑)。

パート1:フィルム制作
     第1話~第4話 原版16mm
         (35mm拡大ポジからスキャン) 4:3
     第5話 原版35mm(ポジスキャン) 4:3
     第6話 原版35mm(ポジスキャン)
          さらに拡大して天地カットの16:9
         (本来はビスタ1.85:1とスコープ2:35:1の間、亜シネスコサイズ)
パート2:デジタルハイビジョン制作 16:9

ひとつのタイトルを冠した作品で(しかも観ていただくと分かりますが、物語的には全部つながっている)、これだけいろんな画質のものが収録されたパッケージはちょっと珍しいのではないでしょうか。いろんな事情が重なってますが、パート1は当時、4話で打ち切りの可能性もあったんで、予算が低めなんですね。物語的にもそこで終わっても良い構成になってます。好評につき5、6話制作決定したとき、予算もアップしたと。ところが第6話だけモノクロの上にワイドスクリーン映画として制作されたので、また画角も画質も変わってしまったという、なんか「出世魚」みたいな作品なんですよ(笑)。
それに加えてパート2はデジタルですから。もうどんどん変わっていく。それは前からそうなんですが、Blu-ray化でやたらと違いがはっきり分かるようになったんです。
ただ、それはそれでまた一種の味になってるんですね。16mmのちょっと粒子っぽく淡さを含めた発色の感じが、いきなり5話のパートに来ると、「こんな鮮明なトップは初めて観るよ!」とコーフンです。前にそこだけ数十回は観ただろう合体ソングのパートも、改めて高画質で感激です。
ということで、予期せぬ余録があったという商品でした。バラ売りも出てるんで一応紹介しますが、これはあくまで「合体劇場版」でして、2作通して観て意味のある作品だと思うんですよね。ということで、ぜひBOXで。


それでこの劇場版はリマスターBOXと同じ原版を使っているわけですが、どうやってフィルムから最高画質にトランスファーするか、おそらく国内でもっとも詳しいであろうと自負している解説書をそのとき作りました。プレミアがついてしまってますが、ご興味ある方はぜひ。あと、スタッフへの取材は確か2005年だったかに、DVDつきムックでがんばってみました。旧商品ですが、紹介しておきます。

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2008年11月20日 (木)

「マクロスF」第4巻には「鳥の人」プレスつき!

まもなく発売になる『マクロスF』の第4巻。ブックレットの構成・原稿をずっと担当してますが、それとは別に特別付録のプレスシートを担当させていただきました!

というのはこれに収録される第10話が、要するに『マクロスゼロ』で描かれた事件を再映画化するという設定のものでして。ちょっとややこしいんですが、マクロスシリーズというのは過去の映像作品も「本当にあった事件を映像化したもの」という不文律っぽいものがあるのですね。

ということと、『マクロスゼロ』の設定年代がちょうどオンエア年の2008年という記念も兼ねてという事情があって、劇中劇「鳥の人-BIRD HUMAN」が設定され、ランカ・リーがそのイメージソング&準主役に抜擢、以後の超時空シンデレラ(笑)になると、そんな節目の巻でもあるわけですが。「付録にはホンモノっぽいプレスシートをつけたい」というオーダーがあったわけです。でまあ、それはそれでホンモノのプレスシートは、えーと何作品か忘れましたが、それなりに経験もあるんで、がんばってホンモノっぽくしました。監督インタビューまでアレしたりして、構成も思いきり凝ってみました。

そしたら、版元さんもデザイナーさんも、別に密な打ち合わせをもったわけでもないのに、それをはるかに上回る悪ノリというか、「うひゃー、こりゃすごい」みたいなものに仕上げてくるんですよね(笑)。校正刷りでひっくり返り、届いたサンプルの紙質とか刷り上がりを見て、また仰天ですよ。

チケットもまたそれらしく出来ていて……。こういうフェイクで疑似体験っぽい仕事は、今川泰宏監督版『鉄人28号』DVD(バラ)解説書を筆頭にいろいろやってきましたが、いやもう最高ですよね。現実感にアナがあいて、アニメ世界と風通しがよくなるような、そんな仕事ができて満足です。

そうそう、それと改めて「マクロスゼロ」をこの仕事のためにBlu-rayで再見したんですが、前にDVDで観たときとまるっきし印象が違ったので、当惑しました。あの物語って、あのHDの画面密度があって成立するもんだなと。微妙なグリーンとかピンク、特に南海の島にある自然や、それが破壊されたときの落差、あるいは血の質感とか、ドッグファイトの密度感、空母類の臨場感とか、なんかけっこう違ったわけです。まとめて観たのも良かったかもしれません。まあ、そういうことで評価や感想って変わるもんだなと。

『マクロスF』最終回にも関わってるので、興味のある方はこの機会にぜひ一気見を。

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2008年11月19日 (水)

ソール・バスの世界

だいたい月イチぐらいで六本木にある川井鍼灸院(アーティスト村上隆さんの紹介による)に通っています。駐車券のために六本木ヒルズのTSUTAYAに立ち寄ることにしてます。
ここはすぐ近くがテレビ朝日のせいもあって、放送、アート、デザイン、グラフィック系の書籍が満載で、見てるだけでも時間を忘れてしまうほどです。
その2階がDVD、CD売り場なわけですが、昨日棚を見てぴぴっと来たのが「ソール・バスの世界」というDVD。買ったその日に観て、超感激ですよ。

ソール・バスとは何者か。
世界的に有名なデザイナーで、ユナイテッド航空からミノルタ、味の素などの企業ロゴもバスの仕事ですが、やはり映像の分野で言えば、映画のタイトルバックの仕事が永遠に語り継がれるものとなることは間違いないところです。
最初にその名を知ったのは何かのTV番組だったと思います。
今でこそ映画のオープニング(ないしエンディング)に凝るのは当然のことで、そこでは本編とは異なる映像の世界があります。それはアニメーションであったり、タイポグラフィであったり、抽象的な写真が出たり。
ところが、ある時期までは文字のみであることが大半であったと。確かに言われてみれば、『ゴジラ』でも『七人の侍』でもそうなんですよね。小津作品はテクスチャを敷いてるぐらいかな。それを「映画が始まる前からワクワクさせてくれる」ようにしたのが、ソール・バスだというのです。
で、次々に出てきたタイトルバックが、「えっ、あれもこれも同じ人の仕事?」みたいなことで、すさまじい衝撃を受けたんですね。10数年以上前のことのはずだから作品名は忘れましたが、たぶん『七年目の浮気』とか『80日間世界一周』とかその辺だと思うのですが。中でもヒッチコックの『めまい』のタイトルは1958年の作品(氷川と同い年)にしてコンピュータ映像の元祖と位置づけられるわけで。

このDVDでは『ウエスト・サイド物語』『グラン・プリ』『おかしなおかしなおかしな世界』などを含む10作品のタイトル映像を、バス自身が解説するという映像が収録というんで、まさにお宝です。ご本人は1996年に物故しており、だいぶ前の映像ですが、もうすごいすごい。やらなければいけない仕事を横においての30分余り、いいものを見せてもらいました。
やっぱり、世の中には「初めてやった人」ってのがいるわけです。その人がどういう考えで何をどう表現したか。ここまで克明に理詰めで語っていることに、まず興奮しました。タイトル映像の仕事ぶりどおり、ものすごくカッチリした方であり、なおかつ芸術の本質に迫る姿勢は、これは書籍では伝わらない。映像で観て良かったです。ちなみに英語もものすごくカッチリして、構文も明解なので、ほとんどの単語が聞き取れるのにもビックリですよ(笑)。
で、思ったんですが、いくつかの作品ではタイトルが、シナリオからきちんと映画の中身を読み解いた「論評映像」にもなっているんですね。タイポグラフィやアニメーションの仕事もいいんですが、人間性の歪みを、おそらくフェロ板(写真の乾燥につかう)に目や口を反射させてゆらめかせた映像の気持ち悪さを観て、ホントにこの人はすごいと思いました。そういう形で内容を把握した上で総括してるからこそ、イマジネーションを喚起するデザインができるのだと。

ちなみにバスは本編の仕事も少しやっていて、いろんな映画に百万回引用された『サイコ』のシャワー惨殺シーン、あの直接的に刺すところを見せずに恐怖を喚起するカット割りも彼の仕事なんだそうです。確かに言われれば仕事の方向性は同質で、直接的でなく、いかにイマジネーションを喚起するかという表現論で、欠かせない人だと再認識して、ちょっと良かったです。

こういう仕事をグラフィック・デザイナーが担当したというとこが重要なんですよね。つまり、映画の中で(これから)語られるべき諸要素を「抽象化」し、何か別のものに「見たて」て、ギュッと圧縮してより昇華した表現に「加工」する……ってことで。おいおい、そりゃアニメーションの思想の根幹に触るものではないか、という今にして分かるようなことも触発されるわけで。道理でアニメとの親和性が高いと思ったら、みたいな。

通りすがりで直感的に手に取った以上の収穫があって、良い買い物でした。こういう縁を感じる出会いは、やっぱりリアル店舗ならではの醍醐味ですね。今度からこの店では、単なる駐車券消化じゃなくて、なるべくそういうぴぴっと来る商品を買うようにします。

P.S.このDVD,解説書としてバスのロゴ(CI)集がついているのも良いです。そのロゴの数々を見るだけで、またしても「ええっ、あれもこれも同じ人?」状態ですよ(笑)。作品にマスターピースってのがあるんですが、作家にも「マスタークリエイター」みたいなオリジン(起源)に相当する人がいるってことですよね。


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2008年11月14日 (金)

前田真宏監督のブログに……

『巌窟王』監督の前田真宏さんのブログに、先日の紹介記事の話題が出ました。ありがとうございます。本来はトラックバックとかでやるのでしょうが、実はよく分かってなかったりして。

いやホントに『虎よ!虎よ!』の影響は大だと思います。70年代まではややマイナーだった(というか好悪が分かれてた)P.K.ディックがいきなりブームになったように、ベスターもひょっこりメジャーになって、いきなりハリウッドで映画化されたりすると面白いんですが。「アイ、ロボット」みたいなアクションムービーになったりして(笑)。まあ、それはそれで別の意味で面白いわけですが。
『ジャンパー』は未見なんですが、予告で見る限りは確かにジョウントっぽいです。
それと『ロボット刑事』の元ネタは、アシモフの『鋼鉄都市』ですよね。ロボットとのコンビを組まされた刑事ものという。で、ロボットの名前に「R」がつくというのは、『究極超人あ~る』のR・田中一郎に受け継がれてたりします。

時間があれば、ハヤカワの銀背なども読み返したいものですが。ネタの宝庫だと思います。高校生のときの記憶で話してたりするんで、ちょっと怪しいことも多いし(苦笑)。
あ、そういやヘンリー・カットナーの「ボロゴーブはミムジィ」映画化という、のけぞるようなニュースはどうなったのかなあ……。
とりとめなくて、すいません。

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2008年11月11日 (火)

「巌窟王」DVD-BOX、発売は12/5!

「青の6号」「アニマトリックス」「ジーニアス・パーティ」で先鋭的な映像を提示する前田真宏監督の代表作。古典小説「モンテ・クリスト伯」を原作に、大胆なスペースオペラ&復讐鬼のピカレスクロマンとして再構築したアニメ作品です。
氷川はDVD-BOXでは前田監督のインタビューを担当しました。ブックレットの全体は前田真宏監督ご自身(と山猫舎)の編集・文で、私自身も初めて見たり読んだりするような初期設定、初期構想の数々に幻惑されるものとなってます。装丁もハードカバーで、ファンとしてはアイテムとしても持っていて損のないものだと思います。
インタビューの方でも、初期構想のあれこれや、どうしてそれを捨てざるを得なかったかなどなど、いろんな興味深いお話が聞けて良かったです。特にこの作品の原点になった「虎よ!虎よ!」の電話線を光として可視できる少女の懐かしいイメージとか、すごく良かったなあ。あの時代のSF小説がもっていた時代を先取りしたイマジネーションを、今こそビジュアライズすべきだというのが、この数年の氷川の自説なわけですが、前田監督はそれをやってくださった方の1人として、ホントに尊敬しております。

本放送時(2004-2005年)、氷川はあらすじや公式Webインタビュー、DVDの解説書などを担当。最初はテクスチャを貼り付け、光と影を意識した大胆な画づくりが話題になりましたが、本質はドラマにあると分かってから個人的にも「ああっ、続きはどうなる?」とハマって観てました。ラスト近くになってくると、シナリオが来ない回とかあったりしたんですよね。あれ? どうやってあらすじ書いたんだ(笑)。
ルルーシュ役として超ブレイクした福山潤さんがアルベールという若者主人公で、サー・カウラーにしてギロロ伍長の中田穣治さんが前の世代の伯爵。この対立と、それを相克しての継承というところがアニメ版のすばらしいところですね。

少し年月が経過して、熟成の味も出ているのではないでしょうか。まとまって観られることにも大きな意味があるように思います。今だから言えますが、私は仕事で少しだけ先まで知ってから完成品を観ていたわけですよね。もう、初見のはずなのに既にして二周目モードなので、毎週がビックリの連続なんですよ(笑)。
基本的に伯爵は麻雀で言えばオープンリーチ、すべての手の内をさらしてアルベールの前にやって来ているんですよね。言葉の多くはダブルミーニングっぽくなっていて、実に深い。先の話を知っていると、「お前は、はたしてわが復讐の言葉の重みを受け止められるか!」みたいな挑戦状に聞こえるんで、すんげーハラハラするわけですよ。未熟なアルベールはもちろんスルーしちゃうわけですが、彼がひとこと「いやだなあ、伯爵。それってこういう意味なんでしょ」とか言い出したら、そこでお話が終わっちゃうんだよな(笑)。そんな滑りっぷりが凄い緊迫するんですよ。
それはけっこう監督サイドでも狙っていたみたいですね。そしてアルベールは、誰でもある時期には経験する「若気の至り」を体現しているんだと、そういうあたりも良かったです。

ほかに伏線的に美味しいとこは、フランツでしょうか。BLともとられかねない、もんのすごいスレスレの発言をしているんですが、うっかりするとつるっと聞き逃しちゃうんですよね。でも、それぐらい自然な言葉だからあとで恐ろしいダメージになって効いてくる。これって、すごいことですよ。それと本放送当時、井上喜久子さん演じるメルセデスがけっこう天然の真犯人というか、自然体で事件の全容の中で「渦の中心核」になってるという説があって、そこも着目して面白いところだったなあ。これも近年、「マクロスF」とか「MSイグルー2」とかで「真っ黒な井上喜久子17歳、おいおい」を知ってると、また味わい深いですね(「巌窟王」では悪役ではないので、念のため)。

そんなこともあって、本放送時にも「これってバラで出すよりも、一気にBOXを出すべきでしょう」などと言っていたのですが。そんな意味でも、ようやく待望のBOXなんですよね。
一回プレイしたら止まらない、ノンストップ状態でいまから観られる方がうらやましいです。終わりまで行ったら、少しして2周目をじっくり楽しんで欲しいです。あちこちにすごい仕掛けがあって、妄想をかきたてられるということでもお買い得でしょう。私も初期構想とか、あんまり説明してない設定とか、新たに得た情報を重ねて「あれ?」みたいな発見が今から楽しみです。

それにしても、amazonのレビューの多さにはビックリです。いつの間にこんな人気作品に(笑)。ファンとしても、関係者の末席にいた者としても、愛着のある作品にリアクションのあることは、とても嬉しいです。


P.S.「虎よ!虎よ!」の文庫って、今は寺田克也さんのカバーイラストになってるんですね。生頼範義さんの方が印象深いなあ……って、あれ?「巌窟王」の仕事のときには、まだそっちだったような。アルフレッド・ベスターのこの小説、ホントにすごくてラストでタイポグラフになるとこは原書でもいつか確認してみたいです。で、他にもすごいところがいろいろ……。「奥歯に加速装置のスイッチがある」とか「怒ると額にイレズミのあとが浮かぶ」とか、その文字が「ノーマッド」だとか……。まあ、そういうわけで必読書のひとつなわけでもあります。

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2008年11月 9日 (日)

家庭用シネラマきたる!

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ビデオグラムへのワイドスクリーン映画の収録方法は昔から問題でして、一番最初は4:3にトリミングされていたわけです。これもセンタートリミングという一括の手法からPAN&SCANという監督や撮影技師立ち会いのもとに新たな構図を決めるという、2種があったんですが。
近年ではLB(レターボックス)という上下に黒味の入った方法が主流になってます。これはアメリカの郵便受けの入り口がこんな感じに見えるからというわけですが(左図)。
もうひとつ「スマイルボックス」という収録方法が出ました(右図)。こんな風に湾曲してるわけですが、たぶんこれが「ニッコリ目」に見えるからスマイリーなんでしょうね。そういえば子どものころ(1960年代)は「映画」というアイコンはこんな風に上下が湾曲していたんですよ。特に超大型画面のシネラマたるや……。
というんで、その収録ソフトのお話。

つい出来心で前から欲しかったこの「西部開拓史」のBDをゲット。これは、ジャイアントスクリーンの歴史とブルーレイという個人的テーマの一環でもあるわけですが。
この映画って有名な純粋シネラマ作品、つまり3本のフィルムを併走させて超ワイドスクリーンを得るという数少ない例の最後の作品(アカデミー賞3部門受賞)で、2.89:1とかいうとん でもない比率なわけです(通常のスコープは2.35:1)。

※シネラマの解説は、このサイトが分かりやすいかも。
http://home.n08.itscom.net/kei/screenformat2.html

DVD版を1500円で買ったら、3カ所の色味がぱっきり割れていて爆笑して、そのまましま い込んじゃったわけですな。で、今回その思い出を念頭におきつつ、ふと手にとってみると「2枚組:DISC2はシネラマの湾曲したスクリーンを再現したスペシャル・スマイルボックス方式」とあるわけですよ!

なにっ! ってなもんですね。

2000年夏にシアトルに行ったときにも、通りすがりでシネラマのロゴつき映画館を発見して、絶対に行こう!と思ってたんですが、行き損なった苦い思い出があったり。今でもアメリカで2カ所か3カ所、シネラマの映画館が残っているはずですが。行けるかどうかも分からないし。あの湾曲スクリーンにももうお目にかかれないのかなーとか思ってたんで、ちょっと嬉しい。

湾曲版の方は、なんか「金田パース」みたいになっているのが爆笑です(画像は以下のレビューサイトを参照)。

http://www.dvdbeaver.com/film2/DVDReviews40/how_the_west_was_won_blu-ray.htm

タテ移動の妙に多い映画で、馬車が移動したりすると、えらい迫力でフレームアウ トしたりすんですよ。左右になんか必ず立っているのは、そうか、やっぱりこう湾曲して見える構図の意図なのかと分かったりで。
※これはアメリカに映画留学中の堺三保さんから指摘がありましたが、3台のカメラの接合部には目印として木とか街灯とかが置いてあるのが常で、それは役者がうっかりそこに立つと顔が割れたりするんで、その目印かねて置いてあるのだそうです。気になっちゃいますよね(苦笑)。

そもそもワイドスクリーン映画というのは、テレビへの対抗もあって、人間の目がヨコについてるから左右に拡げると視界も広がるという理屈なんです。しかし、実際に人間の視界はセンターには歪みがないものの、左右に行くに従って湾曲(ディストーション)があるとされていて、このスマイルボックスっぽい方が認識に近いらしいんですね。なので、けっこうこの画角で観てるだけで、フラットよりも妙な没入感があったのでした。
しかもブルーレイの高密度化で、情報が増えることでそれが余計に感じられる。
そもそもこの映画はドラマとしては退屈で、西部の荒々しく、またみずみずしい自然の風景とワイルドさが体感するのが主眼なのです。
思って た以上に嬉しい映像特典でした。
映画というのは視点(パースペクティブ)を与えるのが目的という、そうした話がより実感をもって体験できました。

結局、私は純粋シネラマ映画って観損なってると思うんですよね。もしかしたら親が連れてってくれたのかもしれないけど。というのは、一応テアトル東京でスダレになったスクリーンは観たことがあって、それにデジャブがあったんです。姫路か大阪でシネラマ観たのかな? 「2001年」のリバイバルもテアトル東京で観てるんだけど、3本分離じゃなかった気がするんですよね。「帝国の逆襲」で雪原に倒れたルークに、 オビワン・ケノビの亡霊が現れるとき、めちゃくちゃ湾曲してたので、せっかくの名場面がギャグになったのはよく覚えてるんですが。
そうそう、3本分離はさすがにデジタル技術の進歩で、BDではしっかりと境目が分からなく補正されてました。たまになんか怪しいけど(笑)、ま あ仕方ないでしょう。まさか家庭でシネラマが疑似体験できるとは、良い時代になったもんです。これ、プロジェクターだともっと疑似体験できるだろうなあ。

※補正の技術にも最新技術が導入されてます。詳しくは以下のサイトを。ここに掲載されてる写真だと補正前の色味が良くなくなってますが、実際の製品の色味は大丈夫です。

http://h50146.www5.hp.com/info/enewsletter/060615/onmove/

ということで、シネラマに興味のある方は必携ソフトですね。

補足その1:毎度お世話になってる大口さんのサイト。
このページのラストに「これがシネラマだ」(This Is Cinerama, 1952年)が載ってます。
http://www.tcat.ne.jp/~oguchi/Wide%20&%20Giant%20%20Screen%2019c-1953.html
「西部開拓史」(1962年)はこの方式の最終作品だそうですね。10年しかもたなかったのか……。

補足その2:「2001年」のシネラマ版には異同があるという指摘も……。この時期のシネラマは3本撮影ではないです。そもそも3台のカメラをヨコに並べた時点で光軸が違っちゃうので、パースも違ってきて、精密につながるわけがないんですよね……。
http://k-hiura.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/2001_02bb.html

補足その3:1987年の在米時はアリゾナ州フェニックスに七ヶ月住んでましたし、90年代末には何度もテキサス州ダラスに行ったので、風景自体が懐かしいという個人的事情もあったりします……。

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2008年11月 6日 (木)

【訃報】マイケル・クライトン

http://www.cbsnews.com/stories/2008/11/05/print/main4575403.shtml
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=658712&media_id=4

今朝ほど知りました。享年66歳、若いです……。

マイケル・クライトンと言えば、まず思い出すのが「保証つき袋とじ」。これは当時の早川書房が単行本を売るときに仕掛けてきた作戦で、途中まで袋 とじになっていなくて、そこまで読んで続きをあけずに「つまらなかったよ」と言えば返金するとか、そういうシステムだったと思います。
「アンドロメダ病原体」がソレでした。高校生当時、図書館にあるものは当然、袋が開いてます。古書店で買っても開いてます(笑)。一度、古書店で開いてないのを見つけたんだけど、あれ?どうしたんだっけなあ。酔狂で買った気もチラリとしますが。
そして「アンドロメダ病原体」と言えばオッドマン。要はプロジェクトには専門家以外が1人入っていた方がいいというトリックスター的な考えです が、こういうのって歳とってからの方が何が言いたかったのか分かりますよね。で、ロバート・ワイズの映画「アンドロメダ…」公開からはだいぶ経っていたん ですが、S-Fマガジンのバックナンバーの大伴昌司の記事とか少年マガジンのもそうだったかな、ともかく期待いっぱいでTV放送を見て、TV撮りもしたは ずです。CGのハシリを使った細菌の変容シーンなども撮った記憶があって、去年のエヴァ新劇場版で使徒のイメージソースがアレだと聞いてイッパツで分かっ たり。

映画と言えば自身が監督した「ウエストワールド」。「ターミネー ター」に大きな影響与えた作品ですね。ユル・ブリンナーのロボットから見た主観映像とかも確かあって、眼球の赤いカメラがむきだしとか、明らかにキャメロンはこれにオマージュ捧げてますよね。
これもまた時間の経過した今の方がピンと来るんですよね。「ロボットを使って自動化したテーマパークで暴走ロボが人間を殺し始める」って内容で すが、まさか日本にディズニーランドができてテーマパークがブームになるとは思いもよらない70年代早々の作品。ちゃんと地に足のついた外挿法的な予測に なってるのが良かったんですね。そういや続編はDVDになってないのかな。

で、ターミネーターつながりというわけじゃないですが、やはり袋とじで単行本が出たのが「ターミナル・マン」。映画は「電子頭脳人間」という「おい おい」な題名でしたが、これまたなんてのか初出の70年代よりは今の方が実感ある設定でして。脳内疾患のある患者を開頭手術してコンピュータチップを埋め 込み発作がおきたときに快感信号みたいなのを送って症状を抑えるようにするが、その快感のフィードバックを求めるようになって云々という設定だったと思う のですが。当時、そんなに脳医学やメンタル系の疾患もまだメジャーな話題ではなかったし、そもそも「そんな人間に埋めるちっちゃいコンピュータなんてでき るのかよ」みたいなイメージでしたからね。
それで映画の「電子頭脳人間」がなんで誤訳っぽいかと言えば、それは自分が会社に入って「ターミナル(端末)」の開発に携わって本当の意味を 知ったからなんですが。「ターミネーター」というのは「終端」であり「末端」であって、人生・生命をそこでチョンと終わらせるヤツだから「ターミネー ター」なんですね。
だからシステムであったり、いろんな長々と続くものの、おしまいの方にいるのがターミナル。で、これがコンピュータあるいは交換機のシステムで どういう意味をもつかと言えば、まあコンピュータも交換機も抜本的には類似システムでできてるわけですが(なので交換機を作っていた会社が電子計算機に乗 り出したりもできるわけですが)、ハイアラーキー(階層構造)、日本ではヒエラルキーという表記が多いですが、そのシステム的な考えで言えば、「お上」が 存在してるわけですね。コンピュータでいえばメインフレーム、電話網でいえば交換機が「お上」なんすよ。
ってわけで、かつてのわたくしはデジタル電話機の開発、つまり端末屋でして、その流れでケータイ関係の仕事もしてたわけですが、なんだかときどき「?」となることがある。それもそのはず、電話はターミナル、下々の方にあるからで、よく考えたら端末って末端をひっくり返しただけじゃんと(笑)。
まあでもターミナルの開発をやらせてもらったおかげで、オールインワンのシステムの仕組みが分かりましたし、人間と接するつまりヒューマンインタフェースの大事さも分かったと。
しかも時代が流れてみれば、ターミナルの方が偉い。つまり中央集権的な「お上」がなくても、究極の分散化システムであるところのインターネットで 同じことができると、そういうパラダイムシフトが来るわけですから。いまは(少なくともユーザーは)パソコンやケータイが「末端」にあって劣るとは思って ないと思いますが。

で、めちゃくちゃフリが長くなりましたが、そういうわけで「脳内コンピュータがご主人様になって、端末=奴隷化しちゃってターミナルになりはてた人間」ってのが、クライトンが本当に題名にこめた意味でございます。
ということで考えてみるとですね、今やPCやケータイにはりついて、刺激がガンガンとネットから脳に降りてきてウットリしまくってるわれわれも、 いつの間にやらターミナルマンではないのか。押井守監督が「サイボーグというのは脳内に内蔵するとか関係ない、ケータイみたいに外化されても同じ作用をす れば本質は同じ」と言ってる意味を考えないとなー、みたいな。

まあ、そういう30年も40年も先取りをしていた方だったわけで。
時間をおいてのヒット作「ジュラシック・パーク」もクライトンの原作の方は、実は「パラダイムシフト」の話でありまして。最後の方で、パラダイム というのは実は中にいる人間には分からないので、シフトが完了しちゃえばまた分からなくなるんだ、みたいなことが書いてありました。確かに弁証法的に考え ればそうなんですよね。
で、問題は「シフトしている最中」でして、つまりそこに境界に接した対立構造が生み出すコンフリクトがあって、ドラマが生まれて争いも発生する と。これはもう、ドラマツルギーを熟知した作家ならではの発想ではないかと思うんですが、それが分かるようになったのも、後からなんですよね。
ちなみに原作はエンターテインメントとしてはちょっと疑問があって、「川を流されると、その向こうは滝」という一生涯でこの展開は1億回ぐらい 見たぞ、みたいなのがあったりするんだもんなー(苦笑)。こないだインディ・ジョーンズだったかハムナプトラだったか(印象が混ざってる)どっちかでヌケ ヌケとやってたアレですよ。

「えっ?何のこと?」みたいなのが後からジワジワ効いてくる。私にとってのクライトンは、そういう作家でした。本当に残念です。

注:マーケットプレイスの「1円」などには340円程度の送料が別途かかるので注意してください。

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2008年11月 5日 (水)

BSアニメ夜話、オンエア始まる

http://www.nhk.or.jp/animeyawa/

以下の3作品のうち、氷川は「電脳コイル」と「劇場版天元突破グレンラガン 紅蓮編」に出演しております。後者は広島で収録しました。いずれも濃い内容なので、お楽しみに。
(深夜時間を間違えるという初歩的なミスで第1夜の告知は間に合わず、失礼しました)。

11/4(火) 深夜24:00~24:55
第一夜「電脳コイル」(2007年 監督・磯光雄)
松嶋初音(タレント)/稲見昌彦(慶応大学教授)/平松禎史(「電脳コイル」原画・各話演出担当)/岡田斗司夫/氷川竜介/加藤夏希/里匠アナウンサー

11/5(水)深夜24:00~24:55
第二夜「ガンバの冒険」(1975年 監督・出崎統)
半田健人(俳優)/仁藤優子(女優)/神山健治(アニメ監督)/椛島義夫(「ガンバの冒険」キャラクターデザイン・作画監督)/河原さぶ(俳優・「ガンバの冒険」主題歌歌手)/岡田斗司夫/藤津亮太/加藤夏希/里匠アナウンサー

11/6(木)深夜24:00~24:55
第三夜「劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇」(2008年 監督・今石洋之)
宮地真緒(女優)/佐藤大(脚本家)/中島かずき(「グレンラガン」脚本)/福井裕佳梨(「グレンラガン」ニア役声優)/武田康廣(「グレンラガン」プロデューサー)/岡田斗司夫/氷川竜介/喜屋武ちあき/里匠アナウンサー

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2008年11月 2日 (日)

「宮崎駿の<世界>」イベント

いよいよ明日(月曜日)となりました。切通理作さんの宮崎駿監督論、文庫版発刊記念イベントです。文庫とはいえ、ものすごい厚みの力作です。竹熊健太郎さんと同席し、語り倒すという趣旨です。三連休の最終日、しかも昼間なんですが、お時間のある方は新宿ロフトプラスワンまでどうぞ。

※『宮崎駿の<世界> 増補決定版』(ちくま文庫)刊行記念

  「アニメ昼話 ポニョとハヤオを語りたおす!」

     宮崎駿は<神>なのか? あるいは破綻した作り手か? 
     全作品に隠されたものをさぐる。

【出演】切通理作(著者)
    竹熊健太郎(サルでも描けるまんが教室)
    氷川竜介 (BSアニメ夜話・アニメマエストロ)

   11月3日(月・祝)

   OPEN 12:00 / START 13:00  前売¥1000/当日¥1500(共に飲食代別)

   会場 ロフトプラスワン (新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864) http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/

    前売は店頭およびネット予約
    こちらで即予約可能
    →http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/reservation/

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2008年11月 1日 (土)

機甲天使ガブリエル(書籍)

夏のSF大会でチラシを見つけてのけぞった書籍、完成してamazonでも受付可能となりました。今日、発刊記念のトークショーもやってたみたいですね。
1980年代、スタジオぬえの宮武一貴氏を中心に、外骨格パワードスーツをメインメカにして開発が進んでいたハードSFもので、一部雑誌やムックに企画段階のものが報じられた「知る人ぞ知る」ものですが、今回、加藤直之氏の画集でもおなじみラピュータからの刊行となりました。宮武デザインのすごさはいまさら言うまでもないですが、いちファンとしても届くのが楽しみです。

内容の詳細は公式HPから。富野由悠季監督の推薦文もスゴイですし、加藤直之氏のメイキングブログも興味津々です。

http://www.laputa.ne.jp/gb.html

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