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2008年11月11日 (火)

「巌窟王」DVD-BOX、発売は12/5!

「青の6号」「アニマトリックス」「ジーニアス・パーティ」で先鋭的な映像を提示する前田真宏監督の代表作。古典小説「モンテ・クリスト伯」を原作に、大胆なスペースオペラ&復讐鬼のピカレスクロマンとして再構築したアニメ作品です。
氷川はDVD-BOXでは前田監督のインタビューを担当しました。ブックレットの全体は前田真宏監督ご自身(と山猫舎)の編集・文で、私自身も初めて見たり読んだりするような初期設定、初期構想の数々に幻惑されるものとなってます。装丁もハードカバーで、ファンとしてはアイテムとしても持っていて損のないものだと思います。
インタビューの方でも、初期構想のあれこれや、どうしてそれを捨てざるを得なかったかなどなど、いろんな興味深いお話が聞けて良かったです。特にこの作品の原点になった「虎よ!虎よ!」の電話線を光として可視できる少女の懐かしいイメージとか、すごく良かったなあ。あの時代のSF小説がもっていた時代を先取りしたイマジネーションを、今こそビジュアライズすべきだというのが、この数年の氷川の自説なわけですが、前田監督はそれをやってくださった方の1人として、ホントに尊敬しております。

本放送時(2004-2005年)、氷川はあらすじや公式Webインタビュー、DVDの解説書などを担当。最初はテクスチャを貼り付け、光と影を意識した大胆な画づくりが話題になりましたが、本質はドラマにあると分かってから個人的にも「ああっ、続きはどうなる?」とハマって観てました。ラスト近くになってくると、シナリオが来ない回とかあったりしたんですよね。あれ? どうやってあらすじ書いたんだ(笑)。
ルルーシュ役として超ブレイクした福山潤さんがアルベールという若者主人公で、サー・カウラーにしてギロロ伍長の中田穣治さんが前の世代の伯爵。この対立と、それを相克しての継承というところがアニメ版のすばらしいところですね。

少し年月が経過して、熟成の味も出ているのではないでしょうか。まとまって観られることにも大きな意味があるように思います。今だから言えますが、私は仕事で少しだけ先まで知ってから完成品を観ていたわけですよね。もう、初見のはずなのに既にして二周目モードなので、毎週がビックリの連続なんですよ(笑)。
基本的に伯爵は麻雀で言えばオープンリーチ、すべての手の内をさらしてアルベールの前にやって来ているんですよね。言葉の多くはダブルミーニングっぽくなっていて、実に深い。先の話を知っていると、「お前は、はたしてわが復讐の言葉の重みを受け止められるか!」みたいな挑戦状に聞こえるんで、すんげーハラハラするわけですよ。未熟なアルベールはもちろんスルーしちゃうわけですが、彼がひとこと「いやだなあ、伯爵。それってこういう意味なんでしょ」とか言い出したら、そこでお話が終わっちゃうんだよな(笑)。そんな滑りっぷりが凄い緊迫するんですよ。
それはけっこう監督サイドでも狙っていたみたいですね。そしてアルベールは、誰でもある時期には経験する「若気の至り」を体現しているんだと、そういうあたりも良かったです。

ほかに伏線的に美味しいとこは、フランツでしょうか。BLともとられかねない、もんのすごいスレスレの発言をしているんですが、うっかりするとつるっと聞き逃しちゃうんですよね。でも、それぐらい自然な言葉だからあとで恐ろしいダメージになって効いてくる。これって、すごいことですよ。それと本放送当時、井上喜久子さん演じるメルセデスがけっこう天然の真犯人というか、自然体で事件の全容の中で「渦の中心核」になってるという説があって、そこも着目して面白いところだったなあ。これも近年、「マクロスF」とか「MSイグルー2」とかで「真っ黒な井上喜久子17歳、おいおい」を知ってると、また味わい深いですね(「巌窟王」では悪役ではないので、念のため)。

そんなこともあって、本放送時にも「これってバラで出すよりも、一気にBOXを出すべきでしょう」などと言っていたのですが。そんな意味でも、ようやく待望のBOXなんですよね。
一回プレイしたら止まらない、ノンストップ状態でいまから観られる方がうらやましいです。終わりまで行ったら、少しして2周目をじっくり楽しんで欲しいです。あちこちにすごい仕掛けがあって、妄想をかきたてられるということでもお買い得でしょう。私も初期構想とか、あんまり説明してない設定とか、新たに得た情報を重ねて「あれ?」みたいな発見が今から楽しみです。

それにしても、amazonのレビューの多さにはビックリです。いつの間にこんな人気作品に(笑)。ファンとしても、関係者の末席にいた者としても、愛着のある作品にリアクションのあることは、とても嬉しいです。


P.S.「虎よ!虎よ!」の文庫って、今は寺田克也さんのカバーイラストになってるんですね。生頼範義さんの方が印象深いなあ……って、あれ?「巌窟王」の仕事のときには、まだそっちだったような。アルフレッド・ベスターのこの小説、ホントにすごくてラストでタイポグラフになるとこは原書でもいつか確認してみたいです。で、他にもすごいところがいろいろ……。「奥歯に加速装置のスイッチがある」とか「怒ると額にイレズミのあとが浮かぶ」とか、その文字が「ノーマッド」だとか……。まあ、そういうわけで必読書のひとつなわけでもあります。

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受信: 2008年12月 7日 (日) 11時16分

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