なんとなくamazonを検索していて驚きました。7月1日に一連の東映動画長編DVDが「期間限定生産」で廉価版になるようなんですね。仕事柄、わりと押さえている方なんですが、それでも全部はゲットしてないんで、この際、欠落を埋めようかな、なんて思ってます。BDになるのはいつの日かって感じもありますし。
調べると、とりあえず過去にDVD化されているもので、マジンガー等を除くものはかなり廉価版の対象になるようですが、とりあえずそろえるのは宮崎駿さんが抜けるぐらいまでの時期で良いかなとも。
以下、駆け足で主観的にランキングを。
◎=必見 ○=観ておいた方が △=時間があれば
◎白蛇伝(1958年)
何と言っても現在の原点中の原点なので、やっぱり必見でしょう。宮崎駿さんがこの映画のヒロインに惚れたのが、アニメを志す一因となったのは、あまりにも有名。トリビア的には、この当時「パンダ」と言えばレッサーパンダのことだったとか、時代性も分かったり。
△少年猿飛佐助(1959年)
「作画汗まみれ」と併読するにはいいかも。割とこの辺はリアル系キャラなので、一周回って現在のリアル志向の参考になるという意見もあります。
◎西遊記(1960年)
初期作品の中ではこれが一番好きですね。歌が素晴らしいです。メリハリの効いたギャグとかも良い。手塚治虫先生が参加されて、先生自身はちょっと思うに任せなかったみたいですが、確実に良い影響はあるんじゃないかな。
△安寿と厨子王丸(1961年)
大昔に観たきりで、あまり良く思い出せません。すいません。
○アラビアンナイト シンドバッドの冒険(1962年)
これもみどころは多い方ですが、シンドバッドものはハリーハウゼンとか日本アニメの方が好きだったりで。相対的に損をしてる感じ。
◎わんぱく王子の大蛇退治(1963年)
これはもう、日本のアニメの歴史を語ろうとするときの最重要ポイントのひとつ。完全にあるひとつの様式を作り上げてます。森やすじさんのデザインは、ディズニーとは違う方法論で、アウトラインとシルエット、意匠のインパクトで和風のアニメキャラを作り上げてます。平面構成っぽくも見えるんですが、立体感もあったりで。
公開時、小学一年生で見た山間からのオロチの背びれ、炎を吐くときの色替え、時間を引き延ばした臨場感は、伊福部昭先生の音楽とともにハートの奥底に刷り込まれてます。ゴジラよりこっちが先だったのは、なんか人生の運命を決めた感もあり。
オロチに迫られて後じさるクシナダ姫を「萌え」の原点の置く向きもありますが、なんか、ものすごく分かる気がするんですよね(笑)。いや、これ以前のヒロインはどこか「ケバイ」ところがつきまとうんで……。
ちなみに題名の読みは「だいじゃたいじ」じゃなくて「オロチたいじ」なので注意してください。BGMも、「♪わんぱっく おうっじ~~の お・ろ・ち た・いーーじ」って聞こえる部分があるし(笑)。
△わんわん忠臣蔵(1963年)
昭和40年代初頭だったか、ある年末にテレビで放送されたというのを、ものすごくよく覚えてます。「忠臣蔵」だから(笑)。要はそれっきり観てないのでした。
◎ガリバーの宇宙旅行(1965年)
当時動画マンだった宮崎駿さんが映画のラスト近く、それまで人形っぽく描かれていたヒロインの中に人間が入っていたというシーンを追加。それによって映画の意味がまるで変わってしまったという、伝説の映画ですね。なんか全宮崎アニメのエッセンスが、そのワンシークエンスに凝縮してるみたいな(笑)。冨田勲+坂本九のミュージカル仕立ての歌曲も素晴らしいです。
◎サイボーグ009(1966年)
木村圭市郎さんの超絶アクションがしびれます。後の金田伊功アクションのルーツですね。芹川有吾さんの演出に小杉太一郎さんの音楽が実に合っていて……というか、後の芹川演出にはこの流用曲が頻出するわけですが。
◎サイボーグ009 怪獣戦争(1967年)
芹川有吾さんの泣かせ演出、悲劇のヒロインものはここにきわまれりです。「元祖王道秘伝書」など、ある方面では有名な「だめ……殺せないわ」のルーツですね。小杉太一郎さんは伊福部昭氏の弟子筋の方で、それで「モスラ対ゴジラ」みたいな曲が出てきたりして。若くして物故されたのが残念です。
△少年ジャックと魔法使い(1967年)
うーん……。印象に薄いというか、相当前にTVで観たとき、ちょっと感心しなかった記憶があるんですよね。もう一度、ちゃんと確認せねば。
△アンデルセン物語(1968年)
40年近く前、夕方の5時台だったかに「オーレおじさんの天気予報」という帯番組がありました。「なんだよ、オーレって闘牛か?」とかガキのころの私は思ってたわけですが、この作品のキャラだと知るのはもっと後のことでした。
◎太陽の王子 ホルスの大冒険(1968年)
これはもう……今さら私が何か言う必要もない記念碑的作品です。
◎長靴をはいた猫(1969年)
同上。それで注目していただきたいのは、制作年なんですね。70年代後半に東映動画のシンボルマークが本作のペロになったりしたことや、「理想の漫画映画」の代表例として置かれることが多いので、なんだか初期作品のような錯覚が生まれがちなんですが、まるでそんなことはないわけです。
◎空飛ぶゆうれい船(1969年)
エヴァの黒潮物産&ボアの元ネタですが、それはそれとして、白眉は宮崎駿作画による「戦車隊VS巨大ロボット“ゴーレム”」ですよ。オレにとっての「宮崎アニメ」はコレですよ、コレ。世界で一番ミリタリー&巨大メカをうまく描けるアニメーターが、宮崎駿さんなんですよ。最近また「渋滞の中に訳の分からないうちに戦車隊が入ってくる→よく分からないビルの隙間→戦車砲発射→耳を押さえる群衆→着弾→半フレームP.U→ゴーレムが破壊しながら視界に入ってくる!」という一連のカットを見ながら号泣してました。生涯、もっとも見直したアニメパートのひとつですな。
○ちびっ子レミと名犬カピ(1970年)
音楽だけを取り出して『タイガーマスク』BGM集の補遺にするという邪道な楽しみ方をしてます。すいません。
◎海底3万マイル(1970年)
これも金田伊功アニメのルーツです。火焔竜の溶岩弾のエフェクトが素晴らしい。ザンボット5話の火球も「まんま」です。あと、崖っぷちから出てくる構図も、『幻魔大戦』の竜に受け継がれてる気が。石ノ森ヒロインがポニーテールなのもポイント高い。渡辺岳夫先生の戦闘曲が格好いいんですよね。
◎どうぶつ宝島(1971年)
演出は池田宏さんですが、もう宮崎駿さんが最大限に仕事しまくってるので、やっぱり「宮崎アニメ全部入り」みたいなとこがありますね(笑)。なんかホントに「かつてこういう楽しい漫画映画がいっぱいあった」かのような錯覚があると思うんですが、極めてレアなんですよ。1日潰せば大半は見られるという感じなので、ぜひチェックして欲しいですよね。
△アリババと40匹の盗賊(1971年)
記憶ですいませんが、宮崎駿さんが昔、「アニメーターとして言われたとおりにやっただけで、毎日やることをやって定時で帰った」みたいな発言をされてたんですよね。まあ、辞める直前の作品なので。で、「あの宮崎駿さんが仕事と割り切ってやると、どういう作画になるのだろうか」という、大変失礼かつ下世話な興味だけがずっと残ってしまったわけなのですが、そういやきちんと確かめてなかったなあとも。大昔(それこそ30年くらい前)にテレビでやったときには、メタモルフォーゼのとこかなと思ったんですが。
ああ、なんだか好き勝手適当に書いてたら長くなってしまいました。
ともあれDVD時代になってからも時間が経ってるし、そうは簡単にBD時代にもなりそうにないので(またDVDみたいに順番に出していくといつになるか分からん)、こういう廉価出し直し企画は歓迎ですね。