ジム・ヘンソン作『ダーククリスタル』25周年
コトの起こりは、たまたま渋谷で取材の合間にサントラで有名な「すみや」に行ったことでした。ふと見ると、あれ? マイフェイバリット映画のひとつ『ダーククリスタル』のサントラがあるではありませんか。
確か所持していたしなあと思って手に取ると「25周年記念エディション」とありまして。え? もうそんなに経ったの? まあ確かに原田知世版『時をかける少女』からもずいぶんと経っていたりするわけはありますが。おかしいなあ1982年の映画だっけ? 「めぐりあい宇宙編」と同じ年なの? まあ1983年の『聖戦士ダンバイン』に影響与えてるからいいのかな……。
なんて言いつつその輸入盤ですが、買って帰ったものの、アマゾンを検索したらちゃんと買えることが分かりました。それがまずコレ。
●The Dark Crystal [Original Motion Picture Soundtrac]
ところがですね……。ついでにざっと出た検索結果をよく見ると!
なんと! いつの間にか『ダーククリスタル』の新DVDが出ているじゃないですか。やっぱり記念盤で。
これがまた「お布施」ソフトで、最初はテープ(ベータか?)、トリミング版LD、米国版レターボックスLD、米国版DVD、国内版DVDと5回も買い直してる作品なわけですが。なんと、これまた買ったはずの「ラビリンス」と抱き合わせですよ……。しかも初回限定。
●ラビリンス&ダーククリスタルTM アニバーサリー・コレクション(4枚組)
アマゾンの紹介を見てのけぞりました。コンセプチャル・デザインのブライアン・フラウド氏による音声解説と日本語版収録! ええっ? メイキング映像! キネマ旬報特製のブックレット添付!
『ラビリンス』の方も嫌いじゃないですけど。デヴィッド・ボウイとジェニファー・コネリーが美しく撮れてる。それだけで充分……って、あれ? こっちにもブライアン・フラウド音声解説つきですね。
あー、分かりました分かりました。ぽちっと……。
余録で分かった情報なんですが、ブライアン・フラウドの画集の方も中古ですが、入手可能ですね。なんと便利な世の中なのでしょうか。オレ、手に入れるのにずいぶん探した気がするぞ……。
●The World of the Dark Crystal (Brian Froud)
《作品補足》
ということで『ダーククリスタル』について思いつくまま簡単に説明。
ハイ・ファンタジーという概念があります。ロウ・ファンタジーは「現実」との接点をもつ異世界ものですが、ハイ・ファンタジーは接点をもたない異世界もの。『指輪物語』のように世界を司るものすべてを構築するスタイルです。
で、そうは定義づけたものの、とりあえず人間が出ている以上は、完璧なハイ・ファンタジーはあり得ないんです。特に映画の場合は映像として人間が見えてしまう以上は、その時点で「ハイ・ファンタジーを演じる映画」になってしまう。
ところが!
『ダーククリスタル』こそは、そこに人間の動きではありえない、しかもリアルな造形のマペットたちを導入することによって、完全なハイ・ファンタジーを実現した映画なのであります。『セサミストリート』や『スター・ウォーズ』でマペット技術を極めたジム・ヘンソンが、ブライアン・フラウドの妖精画のようなファンタジー・ビジュアルを得て、「まったく人間の登場しない」ファンタジー映画を作り上げた。
まあ、そのショックたるや凄いものでしたね。ちょうど世の中はこれからファンタジーブームかな? 的な様相があって、『聖戦士ダンバイン』などはその先取りですが。世界観構築にも大きな影響を与えてます。ってか、オーラバトラー“ドラムロ"とかは「あれ?」みたいなデザインだったり。
ファンタジーの定番「光と闇の戦い」とかあるんですが、闇のスケクシーの先兵ガーシムが、甲虫に甲殻類のハサミをつけたような硬質な戦闘生物で、これがかっこいいんですね。『カリ城』のカゲみたいだし(笑)。お話の主軸も「ボーイ・ミーツ・ガール」。まだ『ナウシカ』が映像化されていない時期ですから、あの時期に「宮崎アニメ」に夢見たことのいくつかはこの映画が体現してるようにも思います。人間は出てきませんが、似た生物としてのゲルフリン族が出てきまして、滅び行く種族の最後の男の子と女の子の出会いとかが、これまたなんとなく『海のトリトン』をほーふつとさせてしまうのは、わしらの世代の病なのじゃ、ほっといてくれ的ですが。
そういうことを差し引いても、この映画は面白いです。ディテールも物語も非常に良くできていて、何度観ても飽きない。あと、基本的に子ども向けなので英語が平易なのも大きなポイントです。私は1986年に翌年の渡米生活に備えて、この映画の録音テープを何度も聞いて耳を慣らした記憶があります。特にナレーションとかは発音も構文も明瞭そのものなので。
まあそんなわけで、この作品はかの出渕裕氏にも多大なる影響を与えておりまして、フラウドの影響は本人もたびたび口にしていたような気がしますが、オーラバトラーものや『ロードス島戦記』の好きな方は、ぜひチェックしてください。
ああ、この機会に立体物とか今の技術で出たりしたら、ヤバイことになりそうだなあ……。
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