星山博之のアニメシナリオ教室
去年、今年と亡くなられる方が多くて落ちこむばかりですが、『機動戦士ガンダム』『銀河漂流バイファム』などの脚本家で知られる故・星山博之さんの単行本が雷鳥社から刊行されました。亡くなる直前まで作業をされていたそうで、これが遺稿にあたると思います。
●星山博之のアニメシナリオ教室
帯にいわく。
アニメに求められているのは、
案外「普遍性」なのだ
この言葉がすべてを語っている気がします。商業アニメにはずっと「特殊性」が求められてきました。米国の「トーキング・アニマル」(しゃべる動物)の文化がその象徴ですが、現実ではあり得ないことを誇張して描くことに特質があると。
それは否定されるべきものではないし、この先もずっと続いていくと思いますが、その一方でアニメであることの異化効果を活用して「人を描く」「共感を得る」というスタイル、映画としてのアニメもあり得るということが、この30数年くらい追及されてきたわけで、『機動戦士ガンダム』もその中の重要なマイルストーンだったと考えています。
そうした秘密の一端が、全7日間を想定した脚本を書くためのレクチャーの中から浮かびあがってくるという点が貴重です。
本書はシンプルに「脚本家志望者のための指南書」としても読めますし、『ガンダム』や『バイファム』などの創作の内に秘められたものの解説としても読めます。そして、これから向こう10年ぐらいは、かなりプライベートな心情を描いた個人・少人数制作のアニメが急速に普及すると思っていますが、そうしたとき「普遍的で」「卑近な」《物語》をどう構築するか、指針になるのではないでしょうか。
本書で特徴的なことは、他に2点。
1つは、寄稿の充実です。
伊藤恒久、安彦良和、藤原良二、大河内一楼(敬称略)といった方々が星山さんとその仕事について語っていること。
もう1つは、参考資料の貴重さです。
『銀河漂流バイファム』の企画書に加えて、『機動戦士ガンダム』の第13話「再会、母よ」の完成稿シナリオと、絵コンテで演出の加わった後の録音台本(完成フィルムに限りなく近いもの)の対比が掲載されているのです。私の知る限りでは、『機動戦士ガンダム』のシナリオが公開されたのは、史上初だと思います。ましてや台本と対比するという掲載形態自体も、ほとんど例をみないことです。
星山さんの言葉が、こうした実作で裏づけられるという点でも、非常に重要な一冊だと言えます。ぜひご覧になってください。
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