朝日ソノラマ、会社解散
アニメ特撮ファンにはムック「ファンタスティックコレクション」、雑誌「宇宙船」などで有名な朝日ソノラマが、この9月いっぱいで営業を停止、解散すると6/21に発表がありました。あまりにも残念です。
●ニュース
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/21/news101.html
●同社の「店じまい」発表
http://www.asahisonorama.co.jp/hp/whatsnew/readers.html
同社の創立は1959年で、私とほぼ同い年です。まだアニメと特撮が「テレビまんが」と呼ばれていた時代に、ソノシートというメディアで主題歌制作を多数行い、また口絵やカードによる怪獣図鑑にもオリジナルのドラマと主題歌のソノシートを添付するなど、今では当たり前のように使われているメディアミックス的な手法の先駆けの会社でした。
いま放送中の『地球へ…』も同社の月刊誌「マンガ少年」に掲載されたものです。この誌名自体がテレビアニメ業界に入った最初の世代、つまり出崎統さんや荒木伸吾さん、石黒昇さんら、貸本漫画家としても活躍していた人たちがあこがれて投稿していた雑誌「漫画少年」のリフレインなんです。
だから、その「マンガ少年」の別冊として「素晴らしきテレビアニメの世界」というアニメ雑誌の先がけみたいなものが出たり、1977年に「ガッチャマン」と「ウルトラマン」からリバイバル的なムックを出して、アニメブームへの道をつけたり。
『宇宙戦艦ヤマト』にしても、放送中に「ヤマト大図鑑」というスタジオぬえを中心にしたイラスト図鑑+ソノシートを発行。他に石津嵐による小説版、ひおあきらによるコミック版と、ラストがまったく異なるパラレル版を多数発行し、1977年の映画時にもオフィシャル小説やブループリントなどいくつも特徴ある出版物を刊行。『機動戦士ガンダム』も、最初の富野由悠季による小説版はソノラマ文庫ですし、それは『クラッシャージョウ』で高千穂遙文+安彦良和イラストが売れたからですから……。
もうなんというか……この会社が存在しなかったら、いかにテレビや映画で感動しても、その受け皿になる出版物さえなくて、感動のリサイクルみたいなものもなかったわけで、いまみなさんがご覧になってるアニメも特撮も、とっくに絶滅してたわけですよ。「深夜アニメが多すぎだね」「特撮もイケメンばっかだね」なんて、呑気な文句なんて言ってられない。その土台になるものがないんだから……。
とはいえ、一方では1980年創刊の雑誌「宇宙船」には創刊号と2号でアニメの記事を担当させていただき、そのとき「アニメの記事なんて載せるな」という大ブーイングがあったそうで(苦笑)。えーと、宇宙船の創刊○周年だったかの記事で、まったくそこら辺無視されて、コメントの声もかからなかったし、アニメが載ってたことさえ切り捨てられてましたね。まあ、そんなこんなで、コラム書くようになるまでご縁もなかったりもした会社でもあるわけで……。
思いかえせば、あの80年代初頭ぐらいから、特撮もアニメも作品単位で情報が潤沢に回り初めて、自分が当たり前だと思っていたような全方位的な路線というのは、「緩慢な死」に向かっていったのでしょう。なので、残念というよりは、そうした30数年ぐらいのタイムスパンが閉じた感があり、このところ感じる「節目」感が強まります。
本当に残念ですが、まあその世情を真摯に受け止めながら、この先、自分が何をすべきか、何ができるのかを真剣に考えていきたいと思います。
●宇宙船編集部の解散が示唆されている最後の特撮ムック
●宇宙船の誌名が冠された最後のイヤーブックになるか?
●朝日ソノラマ音盤の黄金期に出た主題歌コンピレーション
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